競技生活とセカンドキャリアの邪魔になる自己否定

アスリートに身についた自己否定の癖と克服方法

子供の頃からスポーツをしていて、親や指導者から掛けられた言葉は尊心の形成に大きな影響を与え、その影響が大人になってからも残ります。

自尊心とは『ありのままの自分を尊重する心』であり、自分の能力に対する自信と他人との比較から自分を評価して優越感を感じることではなく、過去の自分と比べて自分の成長を自覚して今の自分を誇らしく感じる気持ちのことです。
過去の自分と今の自分を比較して成長した自分を認めるという心理的作業は、過去の失敗や結果を肯定することにもつながるので、過去のことを引きずって今の自分を否定するようなことはなくなります。

他者との比較で自分を評価する癖を捨てる

スポーツで努力をしてきて、それなりに結果を出してきた人でも、自己価値を他者との比較の中からしか見いだせない場合は自尊心が低下しやすいと言えます。
その影響は現役時代にも表れて、競技生活の中での精神的な苦しみや引退を速めてしまう要因になることもあります。
また、他者との比較で自分を評価する癖は、引退後の生活にも影響します。

アスリートの中には、引退をすることで今まで自分を支えてきたものを手放すことなるような感覚に陥る人もいるのですが、その際に他人との比較でしか自己価値を見出せないでいると気分の落ち込みが強くなったり、自分がこれから何をしていけばいいかがわからなくなったりします。

まだ自分の価値感や考え方が確立される前の幼少期にスポーツを始め、その中で指導者や親から他人と比較することで発破を掛けられたり、他人と比較して課題を指摘することばかり繰り返されると、自分のことを他人との比較で確認する癖がついてしまいます。
他人と比較をして発破を掛けたり、課題を指摘することは、指導者や親にとっては楽な方法なので比較によって評価をされるという体験をしてきた人は多く、他人との比較で自分を評価する癖を持っているアスリートも多いように思います。
私がアスリートから競技に関する相談を受ける時も、キャリアに関する相談を受ける時も、そのアスリートにとってこの癖を捨てることが必要だと感じることも良くあります。

比較対象を過去の自分に変える

上記の内容を読んで思い当たるという人は、自分の頭の中に生じる自己評価のパターンを見直す必要があります。
癖として身についた思考パターンは無意識に働いてしまうので、改善するには意識的に別の思考を繰り返すことが必要になります。
その思考パターンは、自己評価をする時に自分の比較対象を他人から過去の自分に変えるということです。

他人と自分を比較することは、他人をお手本にしたり、自分と他人の違いから自分の良さを見つけたり、自分に欠けているものに気づくためには必要なことですが、他人との比較をすることばかりでは努力をするモチベーションが高まりません。
そして、比較をする目的が自己否定になって行くと自尊心が低下していきます。

他人と自分を比較する以上に、今の自分と過去の自分を比較する思考の癖を身につけること意識してみて下さい。
自己評価をする時の比較対象を他人から自分に変えるということは、自分の成長を自覚することにつながります。
また、過去から克服できていない課題を確認することにもつながります。

他人と自分を比較するばかりでは、自分が成長してもそれ以上の人を比較対象にして自己評価をしてしまうので、自分の成長を肯定的に受け止めることができなくなってしまいます。
自分自身が成長しているということは、努力の成果が出ているということ、目的達成に近づいていることなどの表れであり、それらを自覚することによって自尊心も高まるのです。

自己否定を止めると何が変わるのか

自己否定をする癖を持っている人は、気分が低下しやすい、物事をネガティブに捉えてしまう、行動力が弱いというような特徴があります。
そのため、自己否定を止めることによって気分が安定し、物事を事実のまま受け止めて冷静に考えることができるようになります。
そして、行動力が増すだけでなく、その行動の質も向上します。

私達の生活の中で競技であれ、ビジネスであれ、人間関係であれ、それらの結果には自分の行動が大きく影響しています。
物事の結果は、自分の行動だけによって決まるものではないので、全てをコントロールすることは出来ませんが、自分の行動に関してはコントロールすることが可能です。
そのため、行動力があること、自分の行動が達成したい目的に対して理に適ったものであることは、自分にとってより良い結果を出すために必要な条件でもあります。

特にアスリートの場合は、自己否定をしてしまう癖が自分が長年やってきた競技よりも、新しく踏み入れる世界での活動の方に悪影響をもたらしやすい傾向にあります。
経験のあることであれば、ある程度過去の結果に基づく自信などが自分を支えてくれますが、新しく始めることは経験がないために自信を持って行動することが難しいからです。

自己否定をしてしまう癖は、幼少期から身についていることが多いため、克服するのに時間が掛ることはありますが、意識的に取り組むことによって克服することは可能です。
自分は他人と自分を比較して自己否定をしてしまうという人は、その思考パターンを変えることを始めて欲しいと思います。

この記事を書いた人

衣川竜也

衣川竜也

株式会社AXIA 代表取締役
メンタルトレーナー、心理カウンセラーとして大阪を拠点に活動しています。
このサイトでは、主にアスリートのキャリア構築に関する心理的要素について
記事を書いています。

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