挑戦をためらう人の心理とプロスペクト理論
何らかの願望を持っていたとしても、その願望を満たすために挑戦ができる人は多くありません。
アスリートは、大会で記録を残すことや勝つことに挑戦しているので、基本的にはその活動自体が挑戦であると言えるかもしれませんが、試合の中のさまざまな場面では挑戦をためらう心理が働くこともあるでしょう。
また、現役選手の時は挑戦心を持って取り組めていたとしても、セカンドキャリアでは挑戦をためらっている自分がいると感じているケースもあるのではないかと思います。
今回は、人間の願望を挑戦につなげることを妨げる心理について書きたいと思います。
損失を避けたいという心理が挑戦を妨げる
『自分は求めていることがあるのに挑戦できていないな』、『何か心がくすぶっているな』、『挑戦して結果を出している人に嫉妬しているな』という方には読んで頂きたい内容です。
競技生活の中や新しいキャリアの中で、挑戦することが苦手だと感じている人が行動を起こすヒントになると思います。
行動経済学の研究で、人間は提示された機会に、利益を得ることが出来る可能性と不利益を被る可能性を感じたら、不利益を被る可能性の方を過大評価してしまうという傾向が明かになっています。
例を上げて説明します。
コインを投げてお金を獲得できるゲームがあるとします。
コインを投げて表が出たら10000円もらえる。
裏が出たら10000円を失う。
上記のような条件の場合、確率的には利益を得ることが出来る可能性の方が高いのですが、不利益を被る可能性を恐れてチャレンジしないという人の方が多いそうです。
仮に下記のように条件が変わっても挑戦しすることを躊躇する心理が働くことがあります。
コインを投げて表が出たら10000円もらえる。
裏が出たら5000円を失う。
コインは3回投げることが出来る。
この条件だと、1回でも表を出せば損することはありません。
このような状態でもゲームにに挑戦しない人もいます。
人間には、このような損失回避性という心理が働いてしまうため、何らかの願望を持ったとしても挑戦することに抵抗を感じてしまうのです。
損失回避性を克服する方法
私は何かに挑戦すべきかどうか悩んでいる人の相談を受けた時には、挑戦することのメリットとデメリット、挑戦しないことのメリットとデメリットを書き出してもらうように伝えることがあります。
それは、損失回避性が働いて挑戦することを止めてしまう人ほど、挑戦することのメリットとデメリットの把握の仕方が曖昧だからです。
メリットとデメリットが整理できていないと、プロスペクト理論の不利益を過大評価する心理が働き、挑戦することが出来ません。
時には自分の行動にストップをかけるべき場合もありますが、多くの人は漠然と挑戦することを恐れて行動することを止めてしまいます。
メリットとデメリットを整理することによって、挑戦することで生じる利益と不利益が明かになり、利益を得ることが出来る可能性が高ければ挑戦しやすくなります。
負ける確率の少ないことから挑戦する
プロスペクト理論は、挑戦によって生じる利益と不利益が明かでも行動を起こすことが難しいというものですので、メリットとデメリットを整理しても動けない人がいます。
そんな人は、まずは利益を得る可能性と不利益を被る可能性の差が大きいことに挑戦することをお勧めします。
まずは難易度の低いことからで良いので、行動すれば良いことがあるという体験を重ねて下さい。
そして徐々に難易度の高いことにも挑戦するようになると、挑戦する力が身に付くようになります。
出来れば、学生や20代のうちに小さな挑戦を続けて、少しずつ標線の難易度を上げる行動を起こしておくと、30代までに挑戦して結果を出す力が高まっていると思います。
まずは小さな挑戦からはじめよう
アスリートの場合は、現役生活よりもセカンドキャリアの中で自分が挑戦することを躊躇っているという経験をすることが多いのではないかと思います。
競技に集中してきた人生だからこそ、自分に何ができるのかわからなくて不安になり、現役時代にある程度の成功体験があるからこそ失敗を恐れて挑戦することができないという状態に陥ってしまう人もいるように思うのです。
私も会社員時代は、会社という仕組みの中でたくさん挑戦をさせてもらって結果を出したこともあり、それ以上に失敗もたくさんしました。
小さな失敗をたくさん繰り返したからこそ、会社員時代の終盤にはある程度会社に貢献できる結果も出すことが出来ていたと思います。
今の仕事を始めてからも、小さな失敗、中くらいの失敗をすることはありますが、その経験が一定の結果を出し続ける力になっているため、少しずつ会社を成長させることもできているように思います。
挑戦することにためらってしまう自分に悩んでいる人、小さな挑戦から始めてみて下さい。
アスリートは、引退をしても挑戦する姿勢を持ち続け、それを周囲の人に示し続けることができる人だと思います。
その姿勢を続けることできている人は、引退をしていてもアスリートだと思うのです。
この記事を書いた人
衣川竜也
アスリートのキャリア構築を支援するオンラインサロン