燃え尽き症候とアスリートのメンタルケア

アスリートが大きな大会やプレッシャーの掛かる大会の後に陥ってしまう心理状態に燃え尽き症候というものがあります。
燃え尽き症候はバーンアウトとも言われているもので、心理的な疲労の影響で感情が上手く働かなくなったり、意欲が低下してしまう状態のことです。
今回の記事は、アスリートの燃え尽き症候との向き合い方について書いています。

感情労働がバーンアウトにつながる

アスリートは、体を酷使しているので常に肉体疲労を抱えることになり、選手生命を延ばしていくためには肉体疲労のケアを上手く行っていくことが求められますが、もう1つ注意して欲しいものが精神疲労です。
精神疲労は、感情労働によって引き起こされます。
感情労働は、感情の抑制、忍耐、緊張といった心の働きのことで、それらが求められる取り組みの中で求められる労働です。

アスリートは、目指す目的によっては日常生活の中で感情を抑制して、大会が近づいてきた時期からそれが終わるまで強い緊張感を感じて生活をすることになるので、強豪校の選手、プロアスリート、日本代表選手などは、アスリートの中でも感情に負荷が掛かりやすい環境でスポーツをしてると言えます。
そのため、学生なら最終学年で引退を迎えた後、プロアスリートなら現役引退後、日本代表選手ならオリンピックや世界大会後に感情労働の蓄積によってバーンアウトになってしまうことがあります。

バーンアウトの症状

燃え尽き症候になると以下のような心理状態が目立つようになります。

  • 情緒的消耗感
  • 脱人格化
  • 個人的達成感の低下

情緒的消耗感

情緒的消耗感とは、特定の感情を必要とする状態が長く続いたり、感情のふり幅が大きくなる状況を繰り返して体験することで、情緒的な疲労が感じられ意欲の低下や興味の消失が起きている状態です。

脱人格化

情緒的な疲労感が高まると、これ以上感情労働をしないように「脱人格化」と呼ばれる行動が見られるようになります。
これは一種の防衛反応で、これ以上情緒的な消耗をおこさないようにするために他人に対して非人間的と言われる行動をとるようになった状態です。
相手の感情への共感力、思いやりが働かない、挨拶をする気も起らないというようになります。

個人的達成感の低下

自分が行った行動から達成感が感じられにくくなっている状態です。
アスリートの場合は、大会で活躍して大きな達成感を感じた後、思うような結果が得られなかった後などにこれ以上練習をする気が起こらなくなるような状態です。
練習の先にあるパフォーマンスの向上や次の大会から達成感が得られるような気がしなくなってしまいます。


燃え尽き症候群になると上記のような症状が表れるので、自分の精神状態が上記の症状に当てはまるような気がしたら燃え尽き症候群を疑ってメンタルケアを行うことをお勧めします。

燃え尽き症候群のメンタルケア

燃え尽き症候群は、放っておくと健康状態や行動に悪影響が生じてしまうので、アスリートにはどのようにケアをすればいいかを知っておいて頂きたいと思います。
燃え尽き症候群には下記のようなメンタルケアの方法が適しています。

  • しっかりと休養をとる
  • アスリート向けのカウンセリングを受ける
  • 競技以外で興味の持てることをやってみる

心を休めるための休養

燃え尽き症候群だと感じたら、一度しっかりと休養をとって下さい。
アスリートが燃え尽き症候群になるほどの状態は、かなり心身を酷使してきたということでもあるので無理をしてはいけません。
何もせずにぼーっと過ごす日があっても構わないので、心はもちろん、体もしっかりと休めてあげることが必要です。

カウンセリングで心の整理を

燃え尽き症候群は、自分の行ってきたことに価値を感じられなくなったり、今後の人生に意欲や興味が感じられなくなっている状態でもあります。
休養をして心身の疲労が和らいだ後は、カウンセリングを受けて心の整理をすることも燃え尽き症候群に対するメンタルケアになります。

カウンセリングの中で自分がしてきたことを振り返り、その意味を改めて考え直していくことで自分の過去への肯定感が増し、未来に対する意欲や希望が持てるようになれば、再度活動を始めることができるでしょう。

競技から離れて心を満たしてあげる

競技から少し距離を置き、競技生活の影響でやりたくてもできなかったことをしてみるのも燃え尽き症候群になった時のメンタルケアとして有効です。
例えば、気心を許せる友達と出掛けたり、旅行に行ったり、釣りをしたり、ショッピングをするなど、楽しいと感じることや安らぎを感じること、競技を忘れて笑えることなどをして、心を満たしてあげて下さい。

ただ、極端な行動をしてしまうと、健康、財産、人間関係などに問題が生じてしまうことがあるので、休養やカウンセリングなどによってある程度は心身の疲労を軽減した後、心の整理ができた後に行うことが大切です。


アスリートは高いレベルで競技生活を送っている以上は、燃え尽き症候群になる可能性があります。
そのため、燃え尽き症候群なることが良くないことと捉えるのではなく、燃え尽き症候群になった時に適切なメンタルケアをしてあげることが大切だという認識を持っておいて頂きたいと思います。

競技生活を続ける場合も引退をして新しいキャリアをスタートする場合も、心身の疲労が緩和され、心のエネルギーが回復した状態を作ることが必要なので、燃え尽き症候群には適切なメンタルケアを行ってください。

この記事を書いた人

衣川竜也

衣川竜也

株式会社AXIA 代表取締役
メンタルトレーナー、心理カウンセラーとして大阪を拠点に活動しています。
このサイトでは、主にアスリートのキャリア構築に関する心理的要素について
記事を書いています。

■Homepage  ■Facebook  ■twitter

アスリートのキャリア構築を支援するオンラインサロン

アスリートのためのキャリアビルド研究所
アスリートのキャリア構築を目的とした情報提供、アスリート同士の交流、専門家や経営者との交流などの機会を提供するオンラインサロンです。
アスリートとしてのキャリアを次のキャリアに繋げていくことを応援します。

この記事を読んだ人は
こんな記事も見ています