失敗から学び成長を実現するマージナルゲイン

マージナルゲインという目的達成のための成長戦略

マージナルゲインという言葉を聞いたことがありますか?
この言葉は、ツール・ド・フランスでイギリスとして初の優勝チームを作り上げたデイブ・ブレイスフィールドというマネージャーが取り入れたチームの成長戦略の名称です。

このマージナルゲインという成長戦略は、アスリートにとっては現役生活、セカンドキャリアの両方に活用できるものなので、どのようなものかを説明したいと思います。
私は、アスリートに対して競技のパフォーマンスアップのコーチングを行う時にもこの戦略を紹介して、その人の取り組みの中に加えてもらうよう提案しています。
マージナルゲインは、効率的かつ効果的な戦略だと思うので、現役選手も元アスリートも参考にして頂ければと思っています。

成功を近づくための1%の改善の繰り返し

マージナルゲインは、設定した目的を達成するためには何が必要かという仮説を立て、改善を繰り返して目的達成のための成長を進めていくという戦略です。
そして、ほんの小さなことでも仮説を立て改善後の変化を見極め、1つの仮説が立証されたら次の仮説を検証するということを繰り返していくのです。
この方法は、2つの違いを比較して検証することができない場合に活用できる戦略です。

パン職人が新商品を出す際に、2つの味のどちらに人気が出るかという検証であれば、2パターンのサンプルを作ってたくさんの人に食べ比べてもらってアンケートを取ることができます。
しかし競技生活やセカンドキャリアで自分の成長と目的達成のためには、自分という人間は1人しかいないので自分が2種類の活動を同時進行して、それを比較をして検証することができません。
そのような場合に活用できる方法がマージナルゲインです。

例えば、野球ならピッチャーがスライダーという変化球を身に付ける時、ストレートに近いスピードでできるだけバッターに近いところで曲がるようなボールを投げたいと思った時、このようなボールの握り方なら理想通りのピッチングができるのではないかと仮説を立て、それを試すという感じです。
仮説と結果が違っていたら、元の仮説のデータを取りつつ新しい仮説を立てて試すということを繰り返して理想に近づけていくのです。

ビジネスなら、2つの方法を比較するABテストという方法と結果の検証方法がありますが、どちらの方法も望ましい結果が出なかった時は、それぞれの方法を仮説を立てて少しずつ変化させて再テストをするという形でマージナルゲインを取り入れることができます。

デイブ・ブレイスフィールドは、かなり細かい改善の繰り返しによってツール・ド・フランス優勝を成し遂げましたが、その細かさは1%の改善の繰り返しと言われるほどだったようです。
実際にすべての事柄を1%ずつ改善していくことができるかというと難しいかもしれませんが、自分の取り組みにマージナルゲインを取り入れるとしたら、最初は大雑把でも良いので仮説と結果の検証を繰り返して成長を目指すことが大切だと思います。

■前進している人は無意識に取り入れている戦略

デイブ・ブレイスフィールドは、この戦略を駆使して無理だと言われたイギリスのチームのツール・ド・フランス優勝という成果を残したのですが、デイブ・ブレイスフィールドが行ったほど綿密でなく、結果も大きなものでなければ、競技やビジネスを通じて成長して結果を出している人は無意識にマージナルゲインに近い取り組みを行っていると感じます。

マージナルゲインの発想を持っていると、ミスが生じた時にそれを悲観的な視点からのみで評価することもなければ、ミスが生じたことに対して生じた感情を引きずり続けることもありません。
ミスが起きたことを反省しつつ、そのミスは自分にどのような情報を与えてくれたのかを考え、次の行動の手掛かりにしています。

私がマージナルゲインという戦略を意識的に取り入れた方が良いと思っている理由は、感情をコントロールするため有効な思考法が身につくからです。
自分の行動と結果を感情的に評価するだけでは次の行動を起こすまでに時間が掛かったり、感情だけで行動を起こしてしまうことになり兼ねません。
マージナルゲインの発想を心掛けると、結果の捉え方が成長のための手掛かりだと思えるようになっていくので、感情が次の行動に与える影響を小さくすることができます。

自分の周囲の人で行動力があり、成果を上げている人の話を聴いてみると、マージナルゲインに類似するような発想を持っていると思います。
感情に囚われて行動を止めることなく、1つの結果を次の行動の手掛かりだと考えると、自分の仮説がどのような結果につながるのかワクワクする気持ちが生じて行動力も増すのでしょう。

この記事を読んでいる方が現役選手だとしても、元アスリートだとしても、マージナルゲインは自分の活動に行かせる戦略だと思います。
選手として結果を残してきた人、競技生活の中で自分の成長を感じることができていた人は、すでにマージナルゲインに近い発想を持って活動しているかもしれません。
そのような方は、仮説と立て行動と結果の関係を分析する視点を細かくしていけば、目的の達成のために活動の精度を上げていけるかもしれません。

 

この記事を書いた人

衣川竜也

衣川竜也

株式会社AXIA 代表取締役
メンタルトレーナー、心理カウンセラーとして大阪を拠点に活動しています。
このサイトでは、主にアスリートのキャリア構築に関する心理的要素について
記事を書いています。

■Homepage  ■Facebook  ■twitter

この記事を読んだ人は
こんな記事も見ています