引退を意識することで身につくメンタリティ

アスリートが、現役時代に引退を視野に入れて生活を送ることに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、今回の記事は引退を視野に入れた現役生活を送ることが現役生活の質を変えてくれることがあります。
今回の記事では、現役生活でどのように形で引退を意識して過ごすのかという点について説明したいと思います。

引退を意識するということの真意

まず、引退を意識するということは、辞めることを意識するということではなく、どうすることによって引退する日を先延ばしにできるかということを考えるということです。
アスリートである以上、引退をする日は必ずやってくるので、『絶対に引退しないぞ!』という現実離れした根性論だけでは実力者が鎬を削り合う厳しい世界で生き残っていくことは難しいと思います。
せっかくアスリートとして競技をしながら収入を得ることができるようになったなら、そこに少しでも長くいるための計画を練るというしたたかさを持っている選手は逞しいと感じます。
現役生活を伸ばすための要素はいくつもあると思いますが、誰にでも共通すると思われる要素について説明したいと思います。

自分の強みを自覚して伸ばすこと

プロや実業団という環境になると、実力のある選手がチームに何人もいて、その中で自分のポジションを確立していくことになります。
私がアスリートの相談を受けている中で、自分の弱点ばかりを気にして自信を低下させてしまうタイプの選手に出会うことがあります。
自分の弱点を修正して高いレベルで戦っていくための準備をすることは大切ですが、弱点があることを過度に悲観している選手は、監督やコーチがその選手のことを時間を掛けてみていこうと思っている中で、弱点を克服して評価を上げなければならないと焦って空回りして、自分の強みを見失っています。

弱点を補うことと並行して自分の強みをしっかりと理解して伸ばしていくことも高いレベルの競争を生き残る術です。
自分の強みを自覚して、その強みならこの世界で勝負ができると信じることで自分を見失うことなく競技生活を続けることができるのです。
高いレベル選手が集まる環境で競争していくには、メンタルが不安定になり練習の質が落ちてしまうと限られた競技生活の時間を無駄に過ごしてしまいます。
自分の弱点ばかりを気にして悩んで伸び悩んでいるアスリートの相談を受けていると、自分の強みを信じて、その強みが通じなければ仕方がないというくらい割り切って競技に取り組むことも大切なのではないかと思います。

目的×練習の質×時間を意識する

引退を意識するということは、現役生活は限られたものだと自覚するということでもあります。
私はコーチングを受けてくれているアスリートに、限られた現役生活の充実度は目的、練習の質、時間の掛け算によって決まるという意識を持つことをアドバイスしています。

目的は、自分が達成したい成果、身につけたい技術や能力、人間的成長など、選手として成長するために必要なものを設定して下さい。
練習の質とは、自分が掲げた目的に対して効果が上がりやすい練習を選択できているかどうかということです。
目的に対して理に適った練習をすることが大切です。
時間は、練習の質が高いなら、あとは時間を掛けることによって目的達成に近づいていきます。
もちろん疲労の蓄積、怪我などは気を付けなければならないので、ただ時間を長くするということではなく、適した時間の長さを保つことを意識して下さい。

引退をする覚悟がメンタルを安定させる

 

アスリートの中には、引退することを受け入れることによってパフォーマンスが安定する人がいます。
これは体力が衰えて来てから引退をする覚悟を決めるということではなく、『結果が出なければ引退になるので、結果を恐れず思い切りやろう』という心理状態になることによって積極的なプレーができるようになるということです。

『ミスをしたらダメだ』、『結果を残さないと試合に出してもらえない』という気持ちが強くなり過ぎて自分を追い込んでしまう選手がいますが、そのような選手が『結果が出なければ引退することになるから、それなら次のキャリアで頑張れば良い』と思えるようになることでパフォーマンスが安定して、結果的に長く現役生活を続けることになるということもあるのです。
アスリートの性格傾向にもよりますが、他者からの評価が気になりやすい選手には引退する覚悟を持つことで気持ちが楽になることもあるのです。

引退への準備が心の余裕を作る

競技にもよりますが、アスリートは練習や試合以外の時間はある程度自由がきくという人もいます。
そのような場合は、競技以外の知識や技術を向上させるために何か始めることが心に余裕を生んでくれることもあります。

厳しい勝負の世界で、もし結果が残せなかったらと考え過ぎて力が発揮できないくらいなら、結果が出なければいつでも他の仕事をすれば良いと思うことで力が発揮できるようになったという選手も実際にいます。
それは投げやりな気持ちではなく、根拠を伴った選択肢であれば心に余裕を生む効果も高いでしょう。

例えば、英会話を学ぶ、金融の知識を学ぶ、何かの資格を取る、ブログなどを使って情報配信をしながらコピーライティングのスキルを身につけるなど、具体的な取り組みをすることによって、その取り組みに費やした時間が自分の人生の選択肢になって、心の余裕を生んでくれるのです。

まとめ

今回の記事は、ネガティブな形で引退というものを考えるのではなく、確実にやってくる未来の出来事として引退を捉えて、引退があるということを競技生活の糧にするための考え方をお伝えしました。
最後にもう一度まとめてみると下記のようなことがポイントとなります。

  • 自分の強みを自覚して伸ばすこと
  • 目的×練習の質×時間を意識する
  • 引退をする覚悟がメンタルを安定させる
  • 引退への準備が心の余裕を作る


競技生活の中で引退を意識して取り組むことは、限りある時間や資源の中でどのように効果を出すのか、どのように結果につなげるのかということを考える思考力を鍛えるきっかけにもなります。
その思考力は、ビジネスの現場でもすぐに生かせる力となります。
競技に取り組み、その競技の技術や能力を高める中で、自分自身を成長させる精神力、思考力を高めることを同時進行で進めていくことを意識して欲しいと思います。
そのような意識を持って競技生活を送ることは、新しいキャリアを歩む時の大きな力となるばずです。

この記事を書いた人

衣川竜也

衣川竜也

株式会社AXIA 代表取締役
メンタルトレーナー、心理カウンセラーとして大阪を拠点に活動しています。
このサイトでは、主にアスリートのキャリア構築に関する心理的要素について
記事を書いています。

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