前回の記事に続き、引退したアスリートの仕事選びの参考となる情報を配信したいと思います。
今回は、業界や職種に焦点を当てて仕事を選ぶことの是非についてです。
仕事を選ぶ際に業界や職種に注目するのは自然なことかもしれませんが、この後に説明するような理由で業界や職種から仕事を選ぶのは望ましくありません。
仕事探しの制度を上げるために是非読んで頂きたいと思います。
自分が持っている情報を疑え!
ずっと競技の世界にいたアスリートが、引退の直前に持っているさまざまな業界や職種の情報は決して多くないでしょう。
中には一部の業界や職種の情報を多く持っていて、賢く就職活動を進めていく人がいるかもしれませんが、多くの人は限られた情報しか持っていなくてもその情報を判断基準にしてしまうことはあると思います。
限られた情報をもとに業界や業種を絞って就職活動をすると、本当なら自分がもっと惹かれる仕事を見つけることができていたかも知れないのにその機会を喪失してしまいます。
そして、そもそも自分が持っているある業界、職種、会社などの情報は、本当に信頼度の高い情報なのかをわかりません。
その情報は誰から得た情報なのか
実際にアスリートだけでなく、ビジネスマンの転職の相談を受けている時にでも、転職に関して思い込み持っている人に出会うことは多いです。
その思い込みの一部を紹介します。
- 30歳を過ぎると転職することは難しい
- 転職する場合は給料は下がってしまう
- ○○という業界、職種は食べていけない
このような思い込みは、その人が誰かから言われたことであることが多いのですが、誰から聴いたのか確認してみると両親であったり、友人や先輩、会社の上司などが多いのですが、その人達自身が転職を経験していない、偏った情報をもとに転職活動をしていた、職場であまり出世していないなどの共通点があります。
自分の行動が1つの情報によって影響を受けている場合、その情報が誰から得たものなのかよく考えて下さい。
その情報源は、本当に信頼できる人なのか検討してみましょう。
もし、相手があなたのことを心配して教えてくれたことかもしれませんが、あなたに対して好意的な思いがあるからと言って情報の質が高いとは限りません。
仕事探しは不確定要素が多い
そもそも仕事探しは不確定要素が多いので、絶対にこうだと断定したアドバイスをすることは難しいです。
私も相談を受けた時には、ある程度に不確定要素を受け入れた上で仕事を探すことが大切だと伝えています。
不確定要素の1つ目は、業界の将来性です。
私は心理業界で14年ほど仕事をしていますが、学生アスリートからこの業界のことについてアドバイスを求められることがあります。
しかし、この業界である程度の経験を積んでいてもこの先のことは明確な予測をすることは難しいのです。
私が仕事を始めた頃には、心理職の国家資格ができるとは思っていませんでしたが、今は国家資格が誕生して私も取得することができています。
そのうち国家資格ができるかもというくらいには思っていましたが、こんなに早く誕生して自分が取得していることは予測していませんでした。
不確定要素の2つ目は、自分の興味の変化です。
好きなことを仕事にしてはいけない理由でも説明した通り、その仕事に費やした努力が仕事への情熱に変わることがあるので、働きながら興味を持っていくこともあれば、好きなことを仕事にしたのに働いているうちにモチベーションが低下していくということもあります。
もちろん、興味のないことを仕事にして、働き続けても興味がわかないこともありますし、好きなことを仕事にして高いモチベーションを維持し続けることもあるので、興味や好きというだけでは先のことは予測できません。
不確定要素の3つ目は、自分と仕事の相性です。
自分にはこんな仕事ができるのだろうかと持っていたけど、続けていると案外向いていることが分かったということもあれば、自信を持って選んだ仕事でも向いていなかったということもあります。
アスリートの場合は、競技一筋で生活してきたためスポーツ以外のことをすることに不安を持っている傾向があるので、無意識に向いている可能性がある業界や職種を選択肢から外していることもあります。
また、仕事との相性は、一定の努力と経験を経た上で分かってくることもあるので、職に就いたばかりの頃に直面する苦労を乗り越えてこそ見えてくることもあります。
自分と仕事の相性は、転職をする時点では不明確な部分が多いということを分かった上で仕事を探した方が良いと言えます。
アスリートの転職活動の手順
競技を引退して仕事を探し始める時、自分の持っている情報は不確かなものである可能性が高く、さらにどの業界も職種を選ぶにしても不確定要素が多いとなると何から始めればいいのでしょうか。
その答えは、情報の整理と更新、そして成長のためのビジョンの明確化です。
まずは情報の整理と更新から
アスリートの場合は、引退後に仕事を探す場合にビジネスマンに比べると圧倒的に情報が不足している人が多いです。
不十分な情報だけで仕事を探そうとするのではなく、まず自分がどんな情報を持っているかを確認して下さい。
自分が持っている情報が確認出来たら、情報量を増やすため、そして今ある情報を更新するために人に話を聞きに行きましょう。
私が知っているあるアスリートは、現役時代にたくさんの人脈を持っていたので、その中の何人もの経営者から話を聞いたそうです。
その人は、たくさんの意見がもらえたことで、自分がこれから何をするかを多角的かつ柔軟に考えることができて、人の健康を支援するビジネスで起業をしました。
経営者やビジネスマンから話を聞く場合は、それぞれの人が偏った業界にいるので、たくさんの人の話を聞くことをお勧めします。
自分にはそんなに人脈がないという方は、私も含めて転職の相談に応じてくれる専門家に相談してみて下さい。
例えば私の場合なら、多角的かつ柔軟的に考えることができるようにサポートしますし、相談を受けた上で自分以外にはどんな人に相談をした方が良いのかなどもアドバイスしています。
自分の持っている情報が少ない場合は、自分で調べることも大切ですが、ビジネスで経験を積んでいる人や就職や転職の知識がある人から情報を得ることは有益です。
情報を得たら、再度情報の整理を行えば自分が進む選択肢をある程度絞ることができるでしょう。
まとめ
アスリートは、競技生活の中ではある意味偏った情報の中で生活しています。
これは、1つの業界の中にいるビジネスマンにも同様のことは言えますが、まだビジネスの世界は他業種との交流も少なからずあるので、アスリートほどの情報不足ではないでしょう。
アスリートは、そもそも偏っている情報が現役生活中にはあまり更新されないままで引退をすることもあるので、引退を決意した時には自分が持っている情報を整理して、社会の実情と照らし合わせることが必要となります。
その上で自分が持っている情報を他者から得た情報を加えて更新することで転職活動のスタートラインに立てるのです。
ただ、引退後に自分の情報を整理して更新するということを行い、それをその後も癖づけておくことは新しい仕事を始めた時に有益な力となります。
なぜなら、仕事ができる人は、自分が持っている情報の整理して更新するという習慣が身に付いている傾向にあるので、転職活動を機にその思考パターンを身につけておくことがセカンドキャリアの中で活かされるのです。
転職をして新しい仕事をしていくには、どうしても不確定要素を避けることはできませんが、自分の情報を整理して更新することで、新しい仕事を選択する自分の感性は磨かれます。
新しく仕事を始めても、最初から自分に合っていると感じれるものは少ないかもしれません。
しかし、長く働くことによって情熱が持てるようになったり、その業界や職種で生きていく能力が身に付く仕事に出会える精度は高くなると思います。
アスリートがセカンドキャリアを考える時、まずは情報の整理、そして更新から始めることを実行して頂ければと思います。
■参考書籍
この記事は、下記の書籍を参考にして書いています。
仕事をどのように選んでいくことが望ましいか、根拠を示しながら説明してあるので、自分のキャリアについて考える手掛りとして読んでおくことをお勧めします。
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この記事を書いた人
衣川竜也
アスリートのキャリア構築を支援するオンラインサロン